市場調査とマーケティングリサーチの違いとは?目的や手法を解説

マーケティング・データ分析
市場調査とマーケティングリサーチの違いとは?目的や手法を解説

市場調査とマーケティングリサーチの違いを正しく理解することは、効果的なマーケティング活動の第一歩です。

これらは混同されがちですが、それぞれ異なる目的と調査範囲を持っています。

市場調査が市場全体の動向を把握することに主眼を置くのに対し、マーケティングリサーチは製品開発や販売戦略といった、より具体的な企業のマーケティング課題の解決を目指します。

本記事では、両者の明確な違い、それぞれの目的や状況に応じた調査方法について解説します。

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市場調査とマーケティングリサーチの根本的な違いを解説

市場調査とマーケティングリサーチの根本的な違いは、その調査対象の範囲にあります。

市場調査は、特定の市場の規模や成長性、顧客層の属性、競合の動向といった「市場そのもの」を把握することを目的としています。

一方、マーケティングリサーチは、市場調査で得られた情報を含みつつ、新製品開発、価格設定、プロモーション戦略、流通チャネルの最適化など、企業が行うマーケティング活動全般に関わる課題解決を目的とします。

つまり、市場調査はマーケティングリサーチという大きな枠組みの中に含まれる一つの要素であり、マーケティングの意思決定に必要な情報を収集・分析する活動全体をマーケティングリサーチと捉えることができます。

市場調査(マーケットリサーチ)が示す範囲とは

市場調査は、企業が参入しようとしている、あるいは既に参入している市場の全体像を客観的なデータに基づいて把握する活動です。

主な調査内容として、市場規模や将来の成長性、シェアの状況、競合他社の製品や戦略、そして顧客の性別・年齢・年収といったデモグラフィック情報などが挙げられます。

これらの情報は、事業計画の策定や新規事業の可能性を探る際の基礎データとなります。
市場調査は、自社を取り巻く外部環境をマクロな視点で分析し、事業の方向性を定めるための羅針盤のような役割を担うものであり、具体的な販売戦略を立てる前段階で行われることが一般的です。

マーケティングリサーチが示す範囲とは

マーケティングリサーチは、市場調査で得たマクロな情報に加え、より具体的なマーケティング施策の意思決定に活用するための調査活動全般を指します。
その範囲は、マーケティング戦略の立案から実行、評価に至るまでのあらゆるプロセスに関わります。

代表的なものとして、マーケティングミックスの4P(Product:製品、Price:価格、Place:流通、Promotion:販促)という要素に関する調査が挙げられます。

例えば、製品開発のための消費者ニーズ調査、最適な価格設定のための価格受容性調査、効果的な広告を制作するための広告表現調査など、企業のマーケティング活動における個別の課題を解決するための情報収集と分析がマーケティングリサーチの主な役割です。

両者に共通する代表的な調査手法

市場調査とマーケティングリサーチは目的や範囲に違いがありますが、情報収集に用いる手法には共通のものが数多く存在します。

調査手法は、数値データで傾向を把握する「定量調査」と、言葉や行動から深層心理を探る「定性調査」に大別されます。

どちらの手法が適しているかは、調査目的によって異なります。

例えば、市場シェアを把握したい場合は定量調査、新商品のアイデアを発見したい場合は定性調査が有効です。
これらの調査手法を適切に比較、選択、あるいは組み合わせることが、精度の高い調査結果を得るために重要です。

定量調査:アンケートなどで数値データを集める

定量調査は、調査結果を数値や割合で把握できる調査手法であり、市場全体の傾向や構造を客観的に捉えることを目的とします。

代表的な方法がアンケート調査で、設定した質問に対して「はい/いいえ」や5段階評価などで回答してもらい、データを集計・分析します。

近年では、インターネットを通じて多数のモニターに回答を依頼するネットリサーチが主流となっており、比較的低コストかつ短期間で多くのサンプルを集めることが可能です。

定量調査によって得られた数値データは、市場規模の推定や顧客満足度の測定など、客観的な根拠に基づく意思決定に役立ちます。

定性調査:インタビューで消費者の本音を探る

定性調査は、数値では表せない消費者の意見や感情、行動の背景にある動機といった「質的データ」を収集する手法です。

代表的な方法に、司会者の進行のもと複数人で話し合うグループインタビューや、調査者と対象者が1対1で深く対話するデプスインタビューがあります。

この調査を通じて、消費者がなぜその商品を選ぶのか、どのような点に不満を感じているのかといった深層心理や潜在的なニーズを探ることが可能です。

アンケートのような定量調査では見えてこない、消費者の「生の声」を捉えることで、商品開発やサービス改善の具体的なヒントを得ることを目的とします。

覆面調査:顧客目線で自社サービスを評価する

覆面調査は、ミステリーショッパーとも呼ばれ、調査員が一般の顧客として店舗やサービスを利用し、その実態を評価する手法です。

店舗の清潔さ、スタッフの接客態度、サービスの提供品質などをあらかじめ設定された評価項目に沿ってチェックし、客観的なレポートを作成します。

この調査により、企業側が把握しきれていない現場の課題や、顧客が実際に体験しているサービスの質を明らかにできます。

自社のサービス改善に役立てることはもちろん、競合となる他社の店舗を調査することで、自社の強みや弱みを客観的に分析し、差別化戦略を立てるための情報を得ることも可能です。

統計データ調査:公的データを活用して市場を把握する

統計データ調査は、官公庁や業界団体、研究機関などが公開している既存の統計データを収集・分析する手法で、デスクリサーチとも呼ばれます。

国勢調査や家計調査報告といった公的なデータは信頼性が高く、多くはインターネットで検索して無料で入手可能です。

これらのデータを活用することで、市場規模の推移、人口動態、消費支出の傾向といったマクロな市場環境を正確に把握できます。

新たなアンケート調査などを実施する前に、まず既存の統計データを調べることで、調査全体のコストを抑えつつ、効率的に市場の基礎情報を収集することが可能です。

マーケティングリサーチで用いられる主な手法

マーケティングリサーチでは、市場全体の動向を把握するだけでなく、製品、価格、流通、プロモーションといった、より具体的なマーケティング戦略の意思決定に直結する情報を得るための多様な手法が用いられます。

これらの手法は、新商品の開発段階から市場投入後の評価まで、マーケティング活動の様々なフェーズで活用され、企業の競争力を高めるための重要な役割を担います。

ここでは、その中でも代表的な手法をいくつか紹介します。

製品テスト:試作品に対する評価を収集する

製品テストは、開発段階の試作品をターゲットとなる消費者に試用してもらい、その評価を収集する調査手法です。

会場調査(CLT:CentralLocationTest)と呼ばれる形式が一般的で、調査会場に来てもらった対象者に製品を試してもらい、味、デザイン、使いやすさ、香り、コンセプトの受容度などについて、その場でアンケートやインタビューを通じて評価を得ます。

この調査によって得られたフィードバックは、製品の改善点や課題を特定し、より市場のニーズに合った製品を開発するための重要な情報となります。

製品企画の方向性が正しいかを確認し、市場投入前のリスクを低減させる目的で実施されます。

ホームユーステスト:日常生活での使用感を確認する

ホームユーステストは、調査対象となるターゲットの自宅に製品を送付し、一定期間、実際の生活の中で使用してもらう調査手法です。

化粧品や食品、日用雑貨といった、継続的な使用によって評価が変わる可能性のある製品に適しています。

一定期間使用した後の感想や、使用前の期待とのギャップ、長期的な使用感、他の家族の反応など、テスト会場では得られないリアルな評価を収集できる点が大きな特徴です。

日常生活という自然な環境下での評価を得ることで、製品が持つ本来の価値や、想定していなかった新たな利用シーン、改善点などを発見することにつながります。

テストマーケティング:限定した地域で商品を先行販売する

テストマーケティングは、新商品を全国で本格的に販売する前に、エリアや期間、販売チャネルなどを限定して先行販売し、市場の反応を試す手法です。

この試験販売を通じて、実際の売上データや、購入者の属性、リピート率、プロモーション施策の効果などを検証します。

テストマーケティングを行うことで、需要予測の精度を高め、全国展開に向けた販売計画や生産計画をより現実的なものにすることが可能です。

また、消費者の反応が想定と異なった場合には、製品や価格、広告戦略などを修正する機会を得ることができ、本格展開における失敗のリスクを最小限に抑える効果が期待されます。

市場調査を効果的に進めるための5ステップ

市場調査を成功に導くためには、思いつきで進めるのではなく、体系立てられた手順に沿って計画的に実行することが不可欠です。

調査の目的設定から始まり、仮説の構築、実地調査、データ分析、そして最終的な報告まで、各ステップで押さえるべき重要な項目があります。

これらのステップを一つひとつ丁寧に進めることで、調査の精度を高め、最終的な意思決定に真に役立つ、価値あるインサイトを得ることが可能になります。

ここでは、市場調査を効果的に進めるための基本的な5つのステップを解説します。

ステップ1:調査の目的と課題を明確化する

市場調査を始めるにあたり、最も重要な最初のステップは「何のために調査を行うのか」という目的と、「何を明らかにしたいのか」という課題を明確にすることです。

例えば、「若者向けの売上が落ちている」という漠然としたテーマではなく、「20代前半の男性における自社製品の認知度が低いのではないか」といったように、具体的な課題を設定します。

調査目的が明確であれば、その後の調査対象者や質問項目、分析方法が自ずと定まり、調査全体の方向性がぶれることを防げます。

この段階で、調査結果を最終的にどのようなアクションにつなげたいのかまで見据えておくことが、有意義な調査にするための鍵となります。

ステップ2:仮説を立てて調査計画を設計する

調査の目的と課題が明確になったら、次はその課題に対する仮説を立てます。
仮説とは、「〇〇という理由で、競合A社に顧客が流れているのではないか」といった、現時点で考えられる仮の答えのことです。

この仮説を検証するために、どのような情報を、誰から、どのようにして集めるかを具体的に計画に落とし込んでいきます。

調査対象者の条件、サンプルサイズ、アンケートやインタビューの具体的な質問項目、調査を実施する手法(ネットリサーチ、郵送調査など)、スケジュール、そして必要な予算などを詳細に定めた調査計画書を作成します。

精度の高い仮説を立てることが、効率的で質の高い調査設計につながります

ステップ3:計画に沿って実地調査を行う

調査計画書の設計が完了したら、次はその計画に基づいて実際にデータを収集する実地調査の段階に移ります。

ネットリサーチ会社にアンケート配信を依頼したり、インタビュアーが対象者に直接ヒアリングを行ったりと、計画した手法で調査を実行します。

この段階では、調査の品質管理が非常に重要になります。
例えば、アンケートの回答に矛盾がないかチェックしたり、インタビューが偏った方向に進まないように調査員への指示を徹底したりするなど、計画通りに正確なデータが収集できるよう細心の注意を払う必要があります。

スケジュール通りに調査を完了させるための進捗管理も欠かせません。

ステップ4:収集したデータを分析して傾向を掴む

実地調査で収集したデータは、そのままでは単なる情報の羅列にすぎません。
このデータを分析し、意味のある知見を抽出するのがこのステップです。

アンケートの回答結果を集計してグラフや表にまとめ、全体の傾向を可視化します。
単純な集計だけでなく、年齢層や性別といった属性ごとに回答の違いを見るクロス集計や、専門的な統計解析ツールを用いた高度な分析を行うことで、データに隠されたパターンや相関関係を発見できます。

当初立てた仮説が正しかったのかを検証しながら、客観的なデータに基づいて事実を読み解き、課題解決のヒントとなるインサイトを導き出すことが目的です。

ステップ5:分析結果を報告書にまとめる

調査の最終ステップは、分析によって得られた結果とそこからの考察を報告書としてまとめることです。

この報告書は、調査を依頼した部署や経営層などの関係者が、調査結果を理解し、次の意思決定を下すための重要な資料となります。

そのため、調査の背景や目的、調査の設計、分析結果、そして結論と提言といった構成で、論理的かつ分かりやすく記述する必要があります。

特に、グラフや図を効果的に用いて視覚的に理解しやすくする工夫が求められます。
単に分析結果を羅列するのではなく、データから何が言えるのかという考察や、今後取るべきアクションの提案まで含めることが重要です

市場調査・マーケティングリサーチを成功させるポイント

市場調査やマーケティングリサーチは、時間とコストをかけて実施する以上、必ずビジネスの成果につなげなければなりません。

そのためには、調査を計画し実行する上で常に意識しておくべきいくつかの重要なポイントがあります。

調査を単なるデータ収集作業で終わらせず、企業の意思決定に貢献する価値ある活動にするためには、目的意識を持ち、適切なプロセスを選択し、時には外部の専門家の力も借りるという柔軟な姿勢が求められます。

調査のゴールを常に意識する

市場調査を成功させる最も重要なポイントは、「調査を終えた後、その結果を使って何を決定するのか」というゴールを常に明確に意識し続けることです。

調査の実施自体が目的化してしまい、膨大なデータを集めたものの、結局何のアクションにもつながらないというケースは少なくありません。

調査を開始する前に、「この調査結果が出たら、Aという戦略を採用する」「もしこういう結果なら、Bの施策を実行する」というように、結果に応じた具体的なアクションプランをあらかじめ想定しておくことが重要です。

ゴールが明確であれば、調査のプロセス全体を通して判断の軸がぶれることがなくなります。

目的に合った最適な調査手法を選択する

市場調査には、アンケート調査、インタビュー、覆面調査など様々な手法が存在し、それぞれに得意なことと不得意なことがあります。

調査を成功させるには、明らかにしたい調査目的に対して、最も適した手法を選択することが不可欠です。
例えば、市場全体の認知率を知りたいのであれば定量的なアンケート調査が適していますが、新商品のアイデアのヒントを探りたいのであれば、消費者の深層心理に迫れる定性的なグループインタビューの方が有効でしょう。

それぞれの調査手法の特性とメリット・デメリットを正しく理解し、目的や予算、期間に応じて最適なものを選択する判断力が求められます。

調査会社への外部委託も視野に入れる

自社に市場調査のノウハウや専門知識、あるいは調査を実施するための人的リソースが不足している場合は、専門の調査会社(リサーチ会社)に外部委託することも有効な選択肢です。

調査の専門家であるリサーチ会社に依頼すれば、調査目的の整理から適切な調査手法の提案、質の高い実地調査、そして高度な分析まで、一連のプロセスを任せることが可能です。

有料のサービスとなりますが、専門家の知見を活用することで、自社で行うよりも客観的で精度の高い調査結果が期待できます。

特に、大規模なアンケート調査や特定の条件に合う対象者を探す必要がある場合は、多くの調査モニターを抱える調査会社の活用が効果的です。

まとめ

市場調査とマーケティングリサーチは、対象とする範囲に違いはあるものの、どちらも企業のマーケティング活動における意思決定の質を高めるために不可欠なプロセスです。

市場調査が市場全体の動向をマクロに捉えるのに対し、マーケティングリサーチはより具体的な製品開発やプロモーション戦略といった課題解決を目指します。

これらの調査を成功させるためには、まず調査の目的とゴールを明確に設定し、その目的に最適な調査手法を選択することが重要です。

そして、計画立案から分析、報告までの一連のステップを丁寧に進めることで、ビジネスの成果に直結する有益な知見を得ることができます。