ブランドエクイティとは?高めるメリット、構成要素、測定方法、成功事例を解説

ブランド・エクイティとは?意味、構成要素、上げ方を解説 顧客・従業員満足度(CS/ES)
ブランド・エクイティとは?意味、構成要素、上げ方を解説

ブランドエクイティは、企業が持つブランドの資産価値を示す重要な概念です。

顧客の購買行動やロイヤルティに大きな影響を与えるため、マーケティング活動においてその構築と向上は不可欠なテーマといえます。

この記事では、ブランドエクイティの基本的な意味から、企業や顧客にもたらすメリット、価値を構成する要素、具体的な測定方法、そして成功企業の戦略事例までを網羅的に解説します。

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  1. ブランドエクイティとは?顧客を惹きつけるブランドの資産価値を解説
  2. ブランドエクイティを高めることで得られるメリット
    1. 企業が享受できる価格競争からの脱却や収益向上
    2. 顧客が感じる購買時の安心感や満足度の向上
  3. ブランドエクイティを構成する5つの基本要素【アーカーモデル】
    1. ①ブランドロイヤルティ:顧客が繰り返し選んでくれる理由
    2. ②ブランド認知度:どれだけ多くの人に知られているか
    3. ③ブランド連想:特定のイメージや感情を抱かせる力
    4. ④知覚品質:顧客が認識する品質の高さ
    5. ⑤その他のブランド資産:特許や商標などの独自の権利
  4. 顧客との関係性を深める4段階の構築ステップ【ケラーモデル】
    1. ステップ1:ブランド・アイデンティティの確立(認知)
    2. ステップ2:ブランド・ミーニングの形成(意味づけ)
    3. ステップ3:ブランド・レスポンスの喚起(反応)
    4. ステップ4:ブランド・リレーションシップの構築(共感)
  5. 自社のブランド価値を可視化する測定方法
    1. 財務データからブランドの金銭的価値を算出する
    2. ブランド再構築にかかるコストから価値を推定する
    3. 顧客ロイヤルティを測るNPS®調査を活用する
  6. ブランドエクイティ向上に成功した企業の戦略事例
    1. 一貫した世界観で熱狂的なファンを生んだIT企業の例
    2. 独自のコンセプトでライフスタイルを提案するコーヒーチェーンの例
    3. 「シンプル」を追求し世界中で愛される生活雑貨ブランドの例
  7. まとめ

ブランドエクイティとは?顧客を惹きつけるブランドの資産価値を解説

ブランドエクイティとは、あるブランドが持つ資産価値のことであり、顧客の信頼や好意的なイメージなど、目には見えない価値の総体を指します。

日本語では「ブランド資産」と訳され、会計上の「のれん」に近い概念です。

このエクイティとは、単に商品やサービスの機能的価値だけでなく、ロゴや名称、デザイン、顧客体験を通じて形成される無形の価値を含みます。

高いブランドエクイティを持つ製品は、機能が同等でも他社製品より高く評価され、選ばれやすくなります。
この資産価値を正しく定義し、向上させることは、現代のマーケ活動において極めて重要な意味を持ちます。

ブランドエクイティを高めることで得られるメリット

ブランドエクイティを高めることは、企業と顧客の双方に多くのメリットをもたらします。
企業にとっては、価格競争からの脱却や収益性の向上が期待でき、マーケティング活動の効果も高まります。

一方、顧客にとっては、購買決定時の安心感や信頼につながり、製品やサービスへの満足度向上に寄与します。

このように、ブランドエクイティを高める取り組みは、持続的な成長を実現するための重要な経営戦略であり、その価値の向上は安定した事業基盤の構築に直結します。

企業が享受できる価格競争からの脱却や収益向上

ブランドエクイティが高い企業は、顧客からの強い信頼と愛着を獲得しているため、価格以外の価値で選ばれるようになります。

これにより、競合他社との消耗的な価格競争を避け、適正な価格設定を維持することが可能です。
顧客は「このブランドだから」という理由で、多少価格が高くても購入を決定するため、企業は高い利益率を確保しやすくなります。

また、新規顧客の獲得コストを抑えつつ、既存顧客のリピート購入や関連商品の購入(クロスセル)も促進されるため、安定的で持続的な収益向上を実現できます。
ブランドエクイティの構築は、企業の収益構造を強化する上で非常に有効な手段となります。

顧客が感じる購買時の安心感や満足度の向上

顧客にとってブランドエクイティの高い製品を選ぶことは購買時の失敗リスクを低減させることにつながります。

数多くの選択肢の中から商品を選ぶ際よく知られていて良い評判を持つブランドは品質や性能に対する信頼感を与え意思決定を容易にします。

またそのブランドを所有し使用すること自体が自己表現や心理的な満足感をもたらすこともあります。
例えば憧れのブランドの製品を手に入れることで得られる高揚感や環境に配慮したブランドを選ぶことで得られる倫理的な満足感などがそれに当たります。

こうした安心感や満足度の向上は顧客とブランドとの長期的な関係性を築く上で重要な要素となります。

ブランドエクイティを構成する5つの基本要素【アーカーモデル】

ブランドエクイティの構成要素を理解する上で広く知られているのが、経営学者のデービッド・アーカーが提唱した「ブランド・エクイティ・モデル」です。

このモデルでは、ブランドエクイティが5つの基本的な要素から成り立っていると定義されています。
具体的には「ブランドロイヤルティ」「ブランド認知度」「ブランド連想」「知覚品質」「その他のブランド資産」という5つの要素です。

これらの資産が組み合わさることで、ブランドの持つ無形の価値が形成されます。
提唱者のアーカーは、これらの要素を個別に評価し、強化していくことがブランド価値向上に不可欠であると説いています。

①ブランドロイヤルティ:顧客が繰り返し選んでくれる理由

ブランドロイヤルティとは、顧客が特定のブランドに対して抱く忠誠心や愛着を指し、競合製品ではなくそのブランドを繰り返し購入する行動に表れます。
日本語では「ブランド忠誠度」とも訳されます。

ブランドロイヤリティが高い状態では、顧客は価格や利便性といった合理的な理由だけでなく、「このブランドが好きだから」という情緒的な理由で選択を行います。

そのため、多少の値上げや競合他社のキャンペーンにも影響されにくく、安定した収益基盤となります。

このロイヤルティを醸成するには、優れた製品やサービスを提供するだけでなく、顧客との継続的なコミュニケーションを通じて良好な関係を築くことが求められます。

②ブランド認知度:どれだけ多くの人に知られているか

ブランド認知度とは、そのブランドがターゲット市場の顧客にどれだけ知られているかを示す指標です。

単に名前を聞いたことがあるというレベルから、そのブランドがどのような製品やサービスを提供しているかを具体的に理解しているレベルまで、段階があります。

認知度が高ければ高いほど、顧客が購買を検討する際の選択肢(検討集合)に入りやすくなります。
特に、消費者が深く考えずに購買を決定するような商品カテゴリーにおいては、最初に思い浮かぶブランド(純粋想起)であることが非常に有利に働きます。

ただし、ただ知られているだけでなく、良いイメージと共に認知されていることが重要です。

③ブランド連想:特定のイメージや感情を抱かせる力

ブランド連想とは、ブランド名やロゴ、シンボルなどから顧客が思い浮かべるあらゆるイメージや感情、情報の集合体を指します。

例えば、「革新的」「高品質」「安心感」「楽しい」といったポジティブな連想は、ブランドの価値を大きく高めます。

これらの連想は、広告、製品デザイン、店舗での体験、口コミなど、顧客とのあらゆる接点を通じて形成されていきます。

企業は、自社が顧客に抱かせたいブランドイメージを明確に定義し、一貫したメッセージを発信し続けることで、意図したブランド連想を構築していく必要があります。
強力で好意的な連想は、他社との差別化を図る上で不可欠な要素です。

④知覚品質:顧客が認識する品質の高さ

知覚品質とは、製品やサービスの客観的な品質そのものではなく、顧客が主観的に認識する品質の高さを指します。

顧客が「このブランドの製品は品質が良い」と感じることで、購買意欲が高まり、価格が高くても納得して購入するようになります。

この知覚品質は、製品の性能や耐久性といった機能的な側面だけでなく、デザインの美しさ、使いやすさ、アフターサービスの充実度、企業の評判など、様々な要素から総合的に判断されます。

客観的な品質が優れていても、それが顧客に伝わらなければ知覚品質は向上しません。
したがって、品質の高さを顧客に的確に伝え、実感させるコミュニケーション活動が重要になります。

⑤その他のブランド資産:特許や商標などの独自の権利

その他のブランド資産には、特許権、商標権、著作権といった法的に保護された権利や、独自の製造技術、強力な流通チャネル、優れた顧客データベースなどが含まれます。

これらの資産は、競合他社が容易に模倣できない参入障壁となり、企業の競争優位性を長期的に維持する上で極めて重要な役割を果たします。

例えば、独自の技術に関する特許は他社の追随を許さず、確立された商標は顧客の信頼を保証します。
また、広範な販売網や強固な提携関係も、他社にはない独自の強みとなります。

これらの無形資産を確保し、有効に活用することで、ブランドエクイティはさらに強固なものになります。

顧客との関係性を深める4段階の構築ステップ【ケラーモデル】

ブランドエクイティの構築プロセスを顧客視点で体系化したのが、マーケティング学者のケビン・レーン・ケラーが提唱した「顧客ベースのブランド・エクイティ・モデル」、通称「ケラーモデル」です。

このモデルは「ブランドエクイティピラミッド」とも呼ばれ、顧客の心理的な段階を4つのステップに分けて示しています。

ピラミッドの土台から頂上へ向けて、顧客とブランドの関係性を深めていくことで、強力なブランドエクイティが構築されると考えられています。

この4つのステップを順に実行していくことが、顧客から深く愛されるブランドを育てるための道筋となります。

ステップ1:ブランド・アイデンティティの確立(認知)

最初のステップは、顧客に自社のブランドを正しく認識してもらう「ブランド・アイデンティティ」の確立です。

ここでは、自社の製品やサービスがどのようなもので、顧客のどのようなニーズを満たすのかを明確に伝える必要があります。

単にブランド名を知ってもらうだけでなく、顧客が購買を検討する特定の場面で、自社ブランドを自然に思い出してもらえる状態を目指します。

例えば、「のどが渇いたときにはこの飲料」といったように、特定のニーズとブランドが強く結びつくように、ブランドアイデンティティを設計し、コミュニケーション活動を通じて浸透させていくことが求められます。

ステップ2:ブランド・ミーニングの形成(意味づけ)

ブランドを認知してもらった次のステップは、そのブランドがどのような意味を持つのかを顧客の心の中に形成することです。

この「意味づけ」は、大きく2つの側面から行われます。

一つは「性能(Performance)」であり、製品の品質、機能、信頼性といった具体的な便益を指します。

もう一つは「イメージ(Imagery)」で、ブランドを使用するユーザー像や、使用される状況、ブランドの歴史や個性といった抽象的な側面を指します。

これら2つの側面を通じて、ブランドが提供する価値や独自の個性を顧客に伝え、他社との差別化を図り、ブランドに対する肯定的な意味づけを促します。

ステップ3:ブランド・レスポンスの喚起(反応)

ブランドの意味づけがなされると、顧客はそれに対して何らかの「反応」を示します。
この反応は、「判断」と「感情」の2種類に分けられます。

判断とは、品質、信頼性、優位性などに対する顧客の合理的な評価を指します。

一方、感情とは、楽しさ、安心感、興奮、社会的な承認といった、ブランドに接触することで引き起こされる情緒的な反応です。

企業は、顧客が自社ブランドに対して肯定的で好意的な判断を下し、ポジティブな感情を抱くように、製品の品質向上やブランド体験の設計に努める必要があります。

ステップ4:ブランド・リレーションシップの構築(共感)

ピラミッドの頂点にあたる最終ステップが、顧客とブランドとの間に強固な関係性を構築することです。
これは、顧客がブランドに対して心理的な一体感や深い共感を抱き、自発的にそのブランドを支持し、他者に推奨するような状態を指します。

この段階に達した顧客は、単なる消費者ではなく、ブランドの熱心なファン、あるいはパートナーともいえる存在になります。

このようなロイヤルティの高い顧客との強い結びつきは、ブランドにとって最も価値のある資産となり、持続的な成功の基盤を形成します。

自社のブランド価値を可視化する測定方法

ブランドエクイティは無形の資産ですが、その価値を客観的に評価し、可視化するための様々な測定方法が存在します。

これらの測定方法を用いることで、自社ブランドの現在地を把握し、マーケティング活動の効果を検証したり、競合他社との比較を行ったりすることが可能になります。

世界的なブランド価値ランキングなどで用いられる金銭的価値の算出から、顧客のロイヤルティを測る指標まで、目的に応じて適切な手法を選択することが重要です。
ここでは、代表的な測定方法をいくつか紹介します。

財務データからブランドの金銭的価値を算出する

ブランドの資産価値を金銭的な金額で評価する方法があります。
これは、ブランドが将来生み出すと予測されるキャッシュフローを現在価値に割り引いて算出したり、ブランドを使用する際に支払われるであろうロイヤリティ料率を想定して計算したりするアプローチです。

例えば、ブランド製品とノーブランド製品の価格差や収益差からブランドの価値を導き出す方法も含まれます。

こうした財務的アプローチは、企業のM&A(合併・買収)や資産評価の際に用いられることが多く、ブランドの経済的貢献度を具体的な金額で示すことができるため、経営層への説明にも有効な計算方法です。

ブランド再構築にかかるコストから価値を推定する

ブランドの価値を、そのブランドをゼロから構築し直した場合にかかるコストに基づいて推定する方法もあります。

これはコストアプローチと呼ばれ、過去に投下した広告宣伝費や研究開発費などの累計額をブランド価値とみなす「過去原価法」や、現在同じブランドを再構築するために必要と想定される費用を算出する「再調達原価法」などが該当します。

この方法は、過去の投資額を基にするため算出が比較的容易ですが、投下したコストが必ずしもブランド価値に直結するわけではないという限界もあります。
そのため、他の評価方法と組み合わせて多角的に価値を評価することが一般的です。

顧客ロイヤルティを測るNPS®調査を活用する

顧客の心理的な側面からブランドエクイティを測定する方法として、NPS(NetPromoterScore)調査が広く活用されています。

「このブランドを友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」というシンプルな質問を通じて顧客ロイヤルティを数値化する指標です。

この調査は、顧客を「推奨者」「中立者」「批判者」に分類し、推奨者の割合から批判者の割合を引いてスコアを算出します。

定期的なリサーチによってNPSの推移を追うことで、ブランドに対する顧客の評価の変化を把握し、改善活動の効果を測定することが可能です。
他の測定方法と比べて手軽に実施できるため、多くの企業で導入されている調査手法です。

ブランドエクイティ向上に成功した企業の戦略事例

ブランドエクイティの向上は、一貫した戦略と長期的な取り組みによって実現されます。
ここでは、独自の戦略によって高いブランド価値を確立し、顧客から強い支持を得ている企業の成功事例を紹介します。

これらの成功例から、自社のブランド戦略を構築するためのヒントを得ることができます。
各社がどのようにして独自の価値を創造し、顧客との間に強固な関係を築き上げてきたのか、その具体的なアプローチを見ていきましょう。

一貫した世界観で熱狂的なファンを生んだIT企業の例

ある大手IT企業は、「Think different」という哲学のもと、革新的で洗練された製品を世に送り出し続けています。

製品の機能性だけでなく、ミニマルで美しいデザイン、直感的なユーザーインターフェース、そして製品から広告、直営店の空間デザインに至るまで、すべてにおいて一貫した世界観を徹底しています。

これにより、単なる「便利な道具」ではなく、所有すること自体がステータスとなるような強力なブランドイメージを構築しました。

結果として、新製品の発売時には行列ができるほどの熱狂的なファンを獲得し、極めて高いブランドロイヤルティを維持しています。

独自のコンセプトでライフスタイルを提案するコーヒーチェーンの例

単にコーヒーを販売するのではなく、「家庭でも職場でもない、第3のくつろげる場所(サードプレイス)」という独自のコンセプトを顧客に提供しました。

高品質なコーヒーはもちろん、落ち着いた内装、心地よい音楽、親しみやすいスタッフの接客などを通じて、顧客が快適に過ごせる空間価値を創出しています。

これにより、コーヒー一杯の価格以上の体験価値を感じさせ、他のカフェチェーンとの明確な差別化に成功しました。

コーヒーを飲むという行為を、豊かなライフスタイルの一部として提案することで、世界的なブランドエクイティを確立した例です。

「シンプル」を追求し世界中で愛される生活雑貨ブランドの例

「これがいい」ではなく「これでいい」という合理的な満足感を顧客に提供することをコンセプトに掲げています。

華美な装飾を排し、素材の選択、工程の見直し、包装の簡略化を徹底することで、シンプルで高品質な製品を適正な価格で提供しています。
この思想は、衣料品から食品、家具に至るまで、すべての商品に一貫して流れています。

ブランドロゴを前面に出さないという独特の戦略も、製品そのものの良さを顧客に伝えることに貢献しています。

この「作為のない、シンプルな心地よさ」という独自の価値観が、国境を越えて多くの人々の共感を呼び、世界中で愛されるブランドとしての地位を築きました。

まとめ

ブランドエクイティは、顧客の認知や信頼、好意的なイメージといった無形の資産であり、企業の競争優位性の源泉となります。

価格競争からの脱却、収益性の向上、顧客満足度の向上など、その構築は多岐にわたるメリットをもたらします。

アーカーやケラーが提唱したモデルを参考に構成要素や構築ステップを理解し、自社の状況に合った測定方法で価値を可視化することが重要です。

成功事例に見られるように、ブランドエクイティの向上には、明確なコンセプトに基づいた一貫性のある戦略と、顧客との長期的な関係構築が不可欠であり、継続的な取り組みが求められます。