CX(カスタマーエクスペリエンス)とは?顧客体験を向上させる方法と成功事例

顧客・従業員満足度(CS/ES)

CX(カスタマーエクスペリエンス)とは、顧客が商品やサービスに触れるすべての過程で得られる「顧客体験」の総称です。

この記事では、CXの基本的な意味から、ビジネスにおける重要性、顧客体験を向上させる具体的な手順、参考になる成功事例までを網羅的に解説します。

企業が競争優位性を確立し、持続的な成長を遂げるために、CXの向上は不可欠な要素となっています。
本記事を通じて、CXへの理解を深め、自社の戦略立案にお役立てください。

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CX(カスタマーエクスペリエンス)の基本的な意味

CX(カスタマーエクスペリエンス)とは、英語の「CustomerExperience」の略で、日本語では「顧客体験」や「顧客体験価値」と訳されます。

この用語が指す意味は、顧客が商品を認知し、購入を検討、利用、そしてアフターサポートを受けるまでの一連のプロセス全体で得られる体験の総称です。

これには、製品の機能や価格といった物理的な価値だけでなく、接客態度やブランドイメージ、使いやすさから生まれる「嬉しい」「楽しい」「快適だ」といった感情的な価値も含まれます。

企業と顧客のあらゆる接点において、いかに豊かで満足度の高い体験を提供できるかがCXの定義であり、その向上がビジネスの成功を左右します。

なぜ今、CX(カスタマーエクスペリエンス)がビジネスで重要視されるのか

現代のビジネス環境において、CX(カスタマーエクスペリエンス)の重要性は急速に高まっています。

多くの市場で商品の機能や価格による差別化が困難になり、顧客は「どのような体験を得られるか」を重視して購買を決定するようになったためです。

SNSなどのメディアの普及により、個人の体験が瞬時に共有され、企業の評判を大きく左右します。

経済産業省もDX推進の一環として顧客起点の価値創出を掲げており、CXへの投資は経営上の重要な仕事と認識されています。

優れたCXは顧客との長期的な関係を築き、持続的な成長の基盤となるため、その重要性は今後さらに増していくと考えられます。

CX向上によって企業が得られる3つのメリット

CX(カスタマーエクスペリエンス)の向上は、企業に多岐にわたる利益をもたらします。
優れた顧客体験を提供することは、単なる顧客満足度の向上に留まらず、会社の収益性やブランド価値に直接的な影響を与える重要な経営戦略です。

具体的には、「リピーターの増加と顧客ロイヤルティの向上」「企業ブランドイメージの向上」「LTV(顧客生涯価値)の最大化」という3つの大きなメリットが期待できます。

これらのメリットは相互に関連し合い、企業の持続的な成長を支える強固な基盤となります。

リピーターが増え顧客ロイヤルティが高まる

優れたCXを提供することは、顧客の満足度を高め、リピート購入を促進する上で極めて効果的です。

商品やサービスの機能的な価値だけでなく、購入プロセスやアフターサポートにおける心地よい体験は、顧客に「またこの企業から買いたい」と思わせる強い動機付けとなります。

このようなポジティブな体験の積み重ねは、単なるリピーターを越え、企業やブランドに対する愛着や信頼、すなわち顧客ロイヤルティを高めることにつながります。

ロイヤルティの高いカスタマーは、競合他社の魅力的なオファーにも揺らぎにくく、安定した収益基盤を形成します。

顧客との継続的な関係性を築くために、CXを向上させる取り組みは不可欠です。

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企業のブランドイメージや価値が向上する

ポジティブな顧客体験は、顧客の口コミやSNSでの発信を通じて自然に拡散され、企業のブランドイメージを効果的に向上させます。

顧客が商品やサービスを利用して「感動した」「素晴らしい対応だった」と感じた体験は、広告よりも信頼性の高い情報として他の潜在顧客に伝わります。

このような良い評判が広まることで、企業は「顧客を大切にする会社」というポジティブなイメージを確立でき、ブランド価値そのものの向上につながります。

結果として、新規顧客の獲得が容易になるだけでなく、価格競争に巻き込まれにくい強固なブランドを構築することが可能になります。

LTV(顧客生涯価値)の最大化につながる

CXの向上は、LTV(顧客生涯価値)の最大化に直接的に貢献します。
LTVとは、一人の顧客が取引期間を通じて企業にもたらす総利益を示す指標です。

優れた顧客体験によって顧客ロイヤルティが高まると、顧客は長期間にわたってサービスを継続利用し、関連商品や上位プランへのアップセル・クロスセルにも応じやすくなります。
これにより、顧客一人あたりの取引額と取引期間が増加し、LTVが向上します。

新規顧客獲得コストは既存顧客維持コストよりも高いとされるため、LTVを最大化することは、マーケティングや営業活動の効率化と収益性の向上に直結します。

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混同しやすい関連用語とCXの違いを解説

CX(カスタマーエクスペリエンス)を理解する上で、CS(顧客満足度)やUX(ユーザーエクスペリエンス)といった関連用語との違いを正確に把握することが重要です。

これらの用語はしばしば混同されて使われますが、それぞれ焦点となる範囲や時間軸が異なります。

各用語の定義を比較し、その関係性を整理することで、CX向上のための施策をより的確に立案・実行できるようになります。

ここでは、CXとCS、そしてUXとの相違点や関係性について詳しく解説します。

CS(顧客満足度)との相違点

CS(CustomerSatisfaction:顧客満足度)は、商品購入や問い合わせ対応など、特定の接点における顧客の期待と、実際に得られた結果との比較によって測られる短期的な評価です。

例えば、「商品の品質に満足したか」「店員の対応は良かったか」といった個別の事象に対する満足度を指します。

一方、CXは、顧客が企業を認知してから購入後までの一連の関わり全体を通じた、長期的かつ包括的な体験価値を捉える概念です。

高い顧客満足度が積み重なることでCXは向上しますが、CSが高いからといって必ずしもCX全体が良いとは限りません。

CSはCXを構成する重要な要素の一つという位置づけになります。

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UX(ユーザーエクスペリエンス)との関係性

UX(User Experience)は、主にウェブサイトやアプリケーション、特定の商品といった単一のプロダクトやサービスを利用する際の「使いやすさ」や「分かりやすさ」、「心地よさ」といった体験を指します。

例えば、アプリの操作が直感的であることや、ウェブサイトで目的の情報をすぐに見つけられることなどがUXにあたります。

これに対し、CXはUXを含むより広範な概念です。

ウェブサイトでの体験(UX)に加えて、広告の印象、店舗での接客、コールセンターの対応、商品の配送体験など、顧客と企業間のすべての接点における体験を包括したものがCXです。

優れたUXは、良好なCXを形成するための重要な基盤となります。

CX(カスタマーエクスペリエンス)を向上させるための具体的な手順

CX(カスタマーエクスペリエンス)を向上させるには、場当たり的な施策ではなく、戦略的かつ体系的なアプローチが求められます。

顧客の視点に立ち、現状の体験を正確に把握した上で、組織全体で一貫した改善活動に取り組むことが成功の鍵です。
このプロセスは、顧客理解の深化から課題の特定、そして具体的な実行と組織変革へとつながります。

ここでは、CXを効果的に向上させるための具体的な手順を3つのステップに分けて解説し、継続的な改善サイクルを構築するための道筋を示します。

顧客接点を洗い出しカスタマージャーニーマップを作成する

CX向上の第一歩は、顧客が自社と関わる全ての接点(タッチポイント)を把握することから始まります。

  • Web広告
  • SNS
  • 店舗での接客
  • 商品の購入
  • アフターサポートのコールセンター

など、オンライン・オフラインを問わずあらゆる接点を洗い出します。

次に、これらの接点を顧客の行動プロセスに沿って時系列で可視化する「カスタマージャーニーマップ」を作成します。

このマップには、各段階での顧客の行動、思考、感情などを詳細に記述することで、顧客の体験全体を俯瞰的に理解できるようになります。

これにより、どの接客ラインで顧客体験が損なわれているか、あるいは向上の機会があるのかを発見するための土台ができます。

顧客の感情や行動を分析し課題を特定する

カスタマージャーニーマップで顧客体験の全体像を把握したら、次に各接点における顧客の具体的な感情や行動をデータに基づいて分析し、課題を特定します。

この段階では、アンケート調査による満足度やNPS®の計測、顧客インタビューによる深層心理のヒアリング、Webサイトのアクセス解析による行動追跡、コールログの分析など、定性的・定量的な手法を組み合わせて顧客インサイトを深く掘り下げます。

顧客がどのような点に満足し、どこでストレスや不満を感じているのか(ペインポイント)を客観的な事実として特定することが重要です。

この課題特定が、効果的な改善策を立案するための基盤となります。

全社で一貫したCX戦略(CXS)を共有し実行する

特定された課題を解決するためには、組織横断での取り組みが不可欠です。
まず、目指すべき顧客体験のビジョンと具体的な目標を明確にしたCX戦略(CXS)を策定します。

この戦略は、役員を含む経営層の強いコミットメントのもと、マーケティングや営業、開発、サポートといった全部門で共有されなければなりません。

CX推進のための専門組織を設置したり、各部門の目標にCX関連の指標を組み込んだりすることも有効です。

全部門が「OneTeam」として連携し、顧客接点ごとに一貫した体験を提供するための仕組みと文化を醸成することが、CX変革を成功に導くための重要な要素です。

従業員体験(ECX)の向上も、質の高い顧客体験の提供につながります。

CX向上の効果を測るための主要な指標

CX向上の取り組みを継続的に改善していくためには、その効果を客観的に測定し、評価することが不可欠です。

感覚的な判断に頼るのではなく、データに基づいた指標を用いることで、施策の有効性を検証し、次のアクションへとつなげることができます。

代表的な指標として、顧客ロイヤルティを数値化するNPS®(Net Promoter Score)があります。
これは「この商品を友人に薦める可能性はどのくらいありますか?」という質問を通じて、推奨者の割合を測るものです。

その他にも、顧客が問題解決に要した労力を測るCES(Customer Effort Score)や、個別の接点での満足度を測るCSAT(Customer Satisfaction Score)などがあります。

これらの指標を定期的に測定し、CXの現状を正しく把握することが重要です。

【国内・海外】CX向上に成功した企業の取り組み事例

CX向上に成功している企業は、国内外に数多く存在します。
例えば、ある日本の小売企業は、徹底した従業員教育により、マニュアルを超えた心温まる接客を実現し、顧客を熱心なファンに変えています。

また、海外の大手EC企業は、膨大な購買データや行動データを分析し、顧客一人ひとりの興味関心に合わせた商品を的確に推薦することで、パーソナライズされた快適な買い物体験を提供しています。

これらの企業の多くは、Oracleなどが提供する高度な顧客データ管理ソリューションを活用し、データに基づいたCX向上施策を実行しています。

このような成功例に見られる共通の取り組みは、顧客を深く理解し、一貫性のある優れた体験を提供しようとする強い意志です。

まとめ

CXは現代のビジネスにおいて競争優位性を確立するための重要な要素です。
その向上には顧客の視点に立った体験の設計と組織全体での一貫した取り組みが不可欠です。

CX戦略を効果的に推進するためには顧客データを一元管理し分析活用するためのツールやソリューションの導入が有効です。

CRMやMAといったシステムあるいはクラウドベースのソフトウェアを活用することで企業の規模や業種を問わず顧客一人ひとりに最適化された体験を提供することが可能になります。

自社の課題や目指す姿に合った最新のツールを選定し活用することがCX向上という一局を制する鍵となります。