飲食店においては人不足も叫ばれる中で、ITを中心とした各種サービスを導入しコストを抑えつつ業務の効率化を目指すことはとても大切です。
しかし、業務の効率化はコストだけをカットしてくれる万能の施策ではなく、使い方によっては顧客満足度や従業員満足度を下げることになる諸刃の剣です。
- マネジメント層の考えと現場の考えがズレていた
- 優先順位を考えずに効率化しようと思ったら余計に業務が複雑になった
- 効率化を行ったものの、従業員満足度、顧客満足度が下がってしまった
など、効率化を行う手段を導入してみたものの思っていたような結果が出なかった!という声も。
この記事では効率化を考えているけど何を効率化できるのか具体的じゃない、どこまでやるべきか分からないという方のために、飲食店において効率化できる可能性のあるオペレーションと、効率化を行うにあたって気をつけることをまとめています。
飲食店で業務効率化できる3つのオペレーション
飲食店の現場のオペレーションを大きく分けると、下記3つの業務に分けることができます。
- ホールオペレーション
- キッチンオペレーション
- バックヤードオペレーション
飲食店で業務効率化を行う場合、どの業務を効率化するのが一番効果的か?となりますが、ホール、キッチン、バックヤードでそれぞれ業務効率化を目指す際の目的や結果は当然違います。
ホールオペレーションの効率化は顧客満足度を上げる前提で行うべし
飲食店で一番お客様との接点が多いのがこのホールオペレーションに従事するスタッフです。
- 来店時のご案内
- 注文取り
- 配膳・下膳とその際の清掃
- お客様のお見送り
など、来店されたお客様を最初から最後までアテンドする役目を持っており、お客様との接点が多いため彼らの行動や行為が顧客満足度やリピーターの獲得に直結することが多い業務です。
同時に自動化が進んでいる業務でもあり、効率化するためのサービスが多々生まれています。
- 予約台帳システム
- モバイルオーダーシステム
- 配膳ロボット
- 自動会計サービス
お店の状況に応じて必要なサービスを導入することで、効率化自体は行える業務となります。
一方、顧客満足度やリピーターの獲得に直結する業務でもあるため、効率化を行った結果サービスの質の低下を招き、顧客満足度の低下に繋がる可能性もあるパートです。
業務の効率化を行う際は顧客満足度を下げないようにではなく、むしろ効率化することで顧客満足度が上がるような施策から進めましょう。
キッチンオペレーションは現場と話して無理なく効率化しよう
キッチンでの業務は当然「調理」がメインとなります。
飲食業の中では顧客満足度への影響が大きな業務で、味と提供スピードと言った重要な要素を担っています。
また、どうしても効率化できる箇所が少ない業務でもあります。
- ペーパーレス化
- キッチンの動線改善
- 仕込み作業の外注化
- セントラルキッチン化
など、できる範囲で効率化を行いましょう。
また、キッチン業務についてはすでに現在の仕組みの中で効率的に回っているケースもあり、無理に動線やフローを変更した結果かえって効率が悪くなるケースなどもあります。
キッチン業務の効率化を行う際には、
- 現場と相談の上実施する
- 料理の質や提供スピードに悪影響を与えないものから取り組む
ことが大切になります。
バックヤードオペレーション
飲食店におけるバックヤードでは
- 集客活動
- 食材・在庫の管理
- 人事
と言った業務が行われています。
バックヤードのスタッフは直接お客様との接点を持つことは少なく、彼らの業務を効率化しても直接的な顧客満足度への影響は少ないでしょう。
一方、バックヤードの業務が効率化された結果、ホールやキッチンスタッフの業務に無駄が増えたり複雑になってしまうなど、従業員の満足度への影響が大きい業務でもあります。
ホールやキッチンスタッフの従業員満足度(ES)が低下した結果、提供しているサービスの質が低下し顧客満足度(CS)が低下してしまうことはよくあります。
バックヤードの効率化を行う際にはバックヤードのスタッフが楽になるだけでなく、同時にホールやキッチンのスタッフの業務も楽になるような効率化を目指すことが大切です。
お客様との接点を効率化してしまうと顧客満足度が下がることも
来店から配膳までIT化を行って効率化し、お店にいる間スタッフの顔を見ることも声を聞くことも一切ないような飲食店を作った際、よほど特異なジャンルの飲食店でない限り顧客満足度は下がる傾向にあります。
極端な例を出すと、完全に無人で焼き鳥が出てきたり、イタリアンに行ったけど回転ずしみたいにパスタが流れてきた…など、これでは自販機で十分となり顧客満足度は下がります。
マクドナルドやスターバックスが今でも接客を止めないことには理由がある
マクドナルドが一時期笑顔を強調していたのは分かりやすい話です。
有本氏によると、マクドナルドの接客で重要なのは「笑顔」と「スピード」だという。ファストフードであるハンバーガーは単価の安い商品だが、注文してから提供されるまでの時間をより短くして、笑顔でお客に対応することで、満足できる買い物体験をお客に提供できる。
「笑顔」というサービスの重要性を象徴するのが「スマイル0円」だ。
マクドナルド元幹部が語った「スマイル0円」の真意と人材育成の極意 ITmedia
スタッフとお客様が一切顔を合わせることなく、注文した食べ物が出てくれば良いだけであれば、ファストフードは自販機で十分です。
これだけ効率化やDX、人材不足が叫ばれる中でもこういった大手の企業が未だに接客を止めないと言うことは、それだけお客様とスタッフのコミュニケーションがお客様の満足度、強いてはリピーターの獲得に繋がっているからと言えるでしょう。
スタッフによる笑顔のある接客を求めているお客様は多い
ファンくるの調査結果に於いても、お客様は飲食店に対して接客も求めているという結果が出ており、中でも
- 入店時と退店時の対応
- お客様の呼び出しへのスムーズな対応
- 対応時の笑顔の有無
の三つの要素が大切であると出ています。
詳しくは下記記事にまとめていますので、ご覧ください。
今やECサイトであってもお客様とのコミュニケーションが大切と言われるなど、すべての商売は人と人のコミュニケーションで成り立っていることを忘れずに取り組む必要があります。
業務効率化を検討する際にはコスト削減だけに着目するのではなく、同時に顧客満足度も上げる手はないか?と考え、判断・実行することが大切です。
お料理の質が下がるのをお客様は一番嫌がる
キッチンの効率化はお店の回転率にも影響するため、売り上げへ直結します。
一方で、効率化を行い過ぎた結果お料理の質が落ちてしまっては元も子もありません。
実際、原材料価格高騰などに伴う飲食店の対応についてファンくるのユーザーへ聞いた調査の結果で、飲食店の対応の中でもっともイヤだと思うものが、「お料理や飲み物の質を落とされること」と言う結果が出ています。
値上げよりもお料理の質が落ちる方が嫌だという方が多い中で、効率化と言ったお客様の目に見えないことの影響でお料理や飲み物の質が落ちてしまうと、なおさら顧客満足度の低下に繋がります。
キッチン業務の効率化を行う際には、提供するお料理の質に影響を及ぼさないものから実行しましょう。
もしお料理に直接的な影響を与える施策を実行する際は、質の担保が確保できるまでテストを繰り返してから実行することが大切です。
IT導入で管理者だけが便利になると従業員満足度(ES)は下がる
業務効率化のために何かサービスを導入する際、どうしても経営者や管理者などマネジメント視点だけで導入を決めてしまうケースがあります。
その結果、導入した現場の業務がむしろ複雑化してしまうケースも。
例えばタイムカードをスマートフォンのアプリで押せるようにした場合、管理者は自動でデータが集まるので楽になりますが、お店に出勤しているスタッフからすると
- わざわざ自分のスマホにアプリをダウンロードしないといけない
- 毎朝お店に着いたあとにスマホでサービスにログインして押さないといけない
と、カードを機械に通せばよかっただけより、手間が増えて面倒になり従業員の満足度(ES)が下がります。
一方でリモートワークなど在宅でお仕事を行う業種にとっては、インターネットやアプリでタイムカードを押せる機能は必須でしょう。
このようにどんなサービスであっても適材適所があります。
そのサービス・機能を導入することで本当に自社の現場の従業員満足度も上がるのか?をよく検討した上で導入しましょう。
効率化が本当に問題を解決するか?確認してから実行しましょう
飲食店においては人不足も叫ばれる中で、ITを活用した各種サービスを導入しコストを抑えつつ業務の効率化を目指すことはとても大切です。
一方、業務の効率化を行うことが目的になり、流行っているからなど上辺だけで効率化のサービスを導入してしまうと、
- お客様の満足度が下がってしまった
- 管理者は楽になったが現場は複雑になり、従業員満足度が下がってしまった
と言ったことが起きる可能性もあります。
効率化は売上を上げるうえで大切な一方、お客様や従業員への影響も大きい施策です。
- 自社、自店舗にとって本当に効率的な状況とはどういう状況か?
- 優先的に効率化させるべきはどの業務か?
- 効率化を行って顧客満足度、従業員満足度は上がるのか?
を確認し、自社にあった施策を吟味した上で施策を実行したり、サービスを導入するなど実行しましょう。