最近よく聞くCXと言う言葉。
顧客体験の価値向上や満足度を上げよう!などと言われることが多いですが、
- CS(顧客満足度)とCXの違いって何?
- 急に言われ始めたけど、なぜ重要なのか?
- 取り組むメリットがいまいち分からない
- どうやればCXは改善されるのか?
など、CXのことを正しく理解できておらず、なんとなくいつもの改善業務を行ってしまっている方も多いのではないでしょうか?
この記事では、CSとCXの違いや、なぜ重要か?、取り組むメリットとCXを改善する方法をまとめて解説しています。
CX(カスタマー・エクスペリエンス)とは顧客体験を高めること
CXとは「Customer Experiens(カスタマー・エクスペリエンス)」の略で日本語に直すと「顧客体験」となります。
商品やサービスへのコスパやスペックなど「物理的価値」ではなく、利用した際の満足感や効果などの「心理的・感覚的価値」です。
顧客の持つ期待を満たす、または期待を超える体験(認知~再利用のフェイズまで)を設計し提供することで、満足度、ロイヤリティを向上させる考え方です。
スペックや外見での差別化からCXによる差別化へ
顧客体験と言う概念は以前からありましたが、近年急激にCXが重視されるようになったのはなぜでしょうか?
理由は様々あるでしょうが、商品のスペックや外見での差別化が難しくなってきたということが様々な業界で起きており、その中でも商品を売るためにCXが重視されていると言えるでしょう。
例えば飲食店で考えてみましょう。
- 接客の質
- お料理の味
- 食材の産地
- お店の清潔感や雰囲気
いずれも差別化できるポイントでありますが、どの要素ももはやレベルが高いのが当たり前の要素となっており、差別化ポイントととしては有効では無くなっています。
街にあるお店であればそこまで差がない。
ましてやチェーン店であれば微妙な違いこそあれど大きな差はない。
と言うのが消費者の正直なところ。
だからこそ
- 味わったからこそ分かる違いや満足感
- ここのチェーン店は「安心」して利用できる
- 良く使うお店で顔なじみがあるから、新しいお店を開拓する気にならない
などなど「体験=CX」に価値を感じている顧客が増えているのです。
もちろんそんなCXが重要視されている今でも商品やサービス自体の魅力、優位性が大切なのは間違いありません。
しかし、良い商品やサービスがあったとしても、体験として良いものを提供しないと継続して顧客が買ってくれなくなっているため、商品やサービスだけでなく体験そのものを提供することが大切と考えられるようになったのです。
CXが高くてもCSは低いこともある
CXとCSって何が違うのか?
説明を求められても正直似たような言葉だし、いったいどこが違うのか良く分からないという方も多いでしょう。
簡単にまとめると、
- CS=部分最適化
- CX=全体最適化
と考えていただけると良いでしょう。
ただし、ここで一つ注意が必要なのは「CXが高い=CSが高いではない」こと。
CSは部分最適、CXが全体最適と捉えると、全体的な満足度が高い商品やサービスであっても、ピンポイントのCSは低いというケースも多々見られます。
例えば「めちゃくちゃ美味しいけど、店が脂っぽくて汚い焼肉屋」みたいなお店ですね。
- CX=めちゃくちゃ美味しかった!満足感高い!
- CS=机や椅子が脂っぽくて女性の顧客満足度は超低い
と言うことです。
商品やサービス毎にCXを設計した上で、狙うべき最適なCSを高めていく必要があります。
企業が満足度の高いCXを提供するメリットは顧客もスタッフも喜んでくれること
顧客の期待値を超えるCXを提供するのは簡単なことではありません。
現場だけでなく経営層も含めて取り組むべきことはたくさんある一方で、満足いく結果に繋がるには時間が掛かります。
しかし、コストを掛けてでもCXを向上させる4つのメリットがあります。
- リピーターの獲得に繋がる
- ファンによる口コミでの認知拡大が期待できる
- 競合他社と差別化でき、よりコアなファンができる
- 顧客が喜ぶ姿を見て、現場で働くスタッフの満足感も上がる
それぞれについて詳しく見てみましょう。
リピーター獲得に繋がる
安定した経営や、継続した売上の向上にはリピーターの獲得が大切です。
新規顧客を獲得するには、リピーター維持の5倍のコストが掛かると言いますので、リピーターの獲得は利益率の向上に大きな意味を持っています。
顧客の期待値を大きく超えるようなCXを提供することができると、
- 繰り返し同じ商品を購入してくれる
- 何度も足を運び来店してくれる
- SNSなどで周りの知人に紹介してくれる
など、リピーターが増える確率を上げると同時に、認知拡大や利益の安定化にも繋がります。
ファンによる口コミで認知の拡大が期待できる
顧客やユーザーの期待を超えるCXを提供できている商品やサービスは、自然と良い口コミや良い印象でのSNS投稿が増えることになります。
商品だけでなく
- 問い合わせへの対応
- 商品販売時の対応
- SNSでの顧客とのコミュニケーション
など、良い印象を持って拡散される要素は多く、企業の信頼感の向上へも繋がります。
そのため商品やサービスを磨くだけでなく、顧客が商品やサービスを体験する上で体験するすべてのフェーズに置いてどのような体験を提供するか?を設計することが大切です。
競合他社と差別化でき、よりコアなファンができる
商品やサービスの差別化が難しくなってきているため、似たような商品やサービスがあった場合、顧客が継続して選んでもらうためにはよりよいCXを提供できることが重要になってきます。
ユーザーの期待を満たすCXを提供することができれば使うほどに満足感を高めることができ、他社商品やサービスへ乗り換えることのないよりコアなファンを作ることができます。
顧客が喜ぶ姿を見て、現場で働くスタッフの満足度も上がる
普段触れ合う顧客やユーザーから、良い反応をいただいた際にうれしくないスタッフはいません。
ふとした瞬間のお客様の
- ありがとう
- 笑顔
- 再来店
- インターネットへの書き込み
など、働く従業員の満足度(ES)の向上に繋がります。
従業員の満足度が上がることで、
- 離職率が下がる
- 積極な業務への取り組み
- 顧客満足度の向上
など、間接的ではありますが採用コストの削減やより効率的なCX向上へと繋がるため外せない要素となります。
なんだかいいこと尽くしで嘘っぽさを感じることもあるかと思います。
ですが、CXを上げることでのデメリットはありません。
しかし当然ながら簡単にCXは上がらず向上させることはとても大変なので、一刻も早くCX向上に取り組むべきなのです。
CXを上げたいときは5つのどの価値を上げるか?をまず決める
CXは、CXの概念を提唱したアメリカの経営学者、バーンド・H・シュミット氏により、下記の5つの価値に分類されています。
- SENSE:感覚的価値
- FEEL:情緒的価値
- THINK:知的価値
- ACT:行動・ライフスタイルに関わる価値
- RELATE:社会的経験価値
一概にCXを向上させると言っても、自社の商品やサービスにとって合っている価値、合わない価値があります。
また、一度にすべての価値を向上させようとしてどれも中途半端になることも。
どの価値をターゲットにするか決め、そのためにいつまでに何を実施するか計画を立てた上で取り組みを行いましょう。
SENSE:感覚的価値
視覚、聴覚、味覚、嗅覚、触覚の五感に訴えかけることで提供できる価値です。
- 美味しいお料理
- 心地よい空間や音楽
- 手触りの良いタオル
などが該当します。
理屈ではなく感覚的に美しい、心地よい、美味しい、良い香り、気持ちよいといった体験を提供し、顧客に価値を感じてもらいましょう。
FEEL:情緒的価値
顧客の感情に働きかけることで提供できる価値です。
顧客が商品やサービスに触れる際、感情に対して働きかけるような価値を提供することも大切です。
例えば顧客とのコミュニケーション時に
- 親切に対応する
- 細かい気配りを持って対応する
- 顧客と二人三脚でプロジェクトを進める
など、顧客に信頼される行動を持って商品やサービスを提供することで、顧客に感情的な印象を残すことに繋がり同じ商品やサービスを繰り返し購入してくれるリピーターとなる可能性が高くなります。
うれしい、感動する、安心するなどの体験を提供し、顧客に価値を感じてもらいましょう。
THINK:知的価値
顧客の知的欲求、好奇心、創造的行為などに訴えることで提供できる価値です。
- 好奇心をくすぐる最新の研究やテクノロジー
- 日常の困りごとを解決する新しい機能
- 成長を体感できるようなコンテンツ
などが該当します。
面白い、スゴイ、ワクワクする!など知的好奇心が満足する体験を提供し、顧客に価値を感じてもらいましょう。
ACT: 行動・ライフスタイルに関わる価値
未体験のアクティビティや新しいライフスタイルの提案など、顧客の行動における新しい価値を提供することで得られる価値です。
例えば
- シェフと一緒にお店のメニューを作る料理教室
- 同じお店で買った自転車みんなで行くサイクリング
- 農作物の手摘み体験
などが該当します。
日常生活の中ではできないような行動、体験を提供し、顧客に価値を感じてもらいましょう。
RELATE:社会的経験価値
家族、仲間、地元など特定の人や集団、社会とのつながりに属することで得られる価値です。
例えば
- 参加者を限定したプレオープンイベントや試食会
- 同じ志を持った人同士をマッチング
- ファンクラブや限定イベント
などが該当します。
特定のコミュニティへ参加・帰属することで特別感を得たり、当事者意識を得られる体験を提供し、顧客に価値を感じてもらいましょう。
CXを上げるには、ひたすら仮説、実行、検証あるのみ
CXを向上させると言うと、何か特別なことをしなくてはいけないのでは?と考えがちですが、やることは業務改善などと同じくひたすらPDCAを廻していくだけです。
1.現状・課題を把握する
まずは現状のCXの状態・課題を把握しましょう。
顧客が自社の商品やサービスに
- 触れる機会
- 購入する機会
- 人に伝える機会
など複数のプロセスごとに状況を把握することが重要です。
客観的な調査や把握が難しいようであれば、外注しての覆面調査、顧客満足度調査を行いましょう。
客観的な現状把握のための覆面調査・顧客満足度調査のやり方はこちら
2.顧客の行動を整理し社内で共通認識を作る
顧客の行動を整理することで、どこに問題があるか?を明確にすることができます。
カスタマージャーニーマップなどに整理した上で社内で共有し、課題や改善点、サービスが目指す方向性を共通認識として決定、取り組みを行うことが大切です。
またCXの改善を定量的に計測するための指標と目標数値の設定も行いましょう。
指標としては
- 顧客満足度(CS)
- ネット・プロモーター・スコア(NPS)
- 実際の顧客行動(来店回数・購買回数など)
- SNS投稿のスコア化
- 従業員満足度(CS)
など様々なものが上げられますが、現在追っている指標やCX向上の施策内容などに合わせて最適な指標を選択・活用しましょう。
3.実践・検証を繰り返す
最後のステップは実践と検証の繰り返しです。
調査で把握した現状と、整理した顧客行動から見えた課題に対して、解決のための仮説、実行、検証、改善を行います。
検証の際には必ず指標を使って定量的に計測した結果を活用しましょう。
ここで定性的に「想像で」改善を行い続けても意味がありません。
自分たちの想像・仮説が正しかったのか?数値に落とし込んで確認、改善することで、現場の納得感も高く取り組みが進み、仮に上手くいかなかった場合でも原因やさらなる課題の把握を行えます。
CX向上には具体的な数値目標を立てて取り組もう
CXを上げるためにCSを上げる!では何も変わりません。
目標を達成し成果を上げるためには、
- 数字などを用いた具体的な目標を作る
- 達成期日を決めて定期的に振り返る
- 目標の数を絞って優先順位を決める
などポイントがあります。
例えば「12月中にお客様への提供時の満足度を上げるために、注文から3分で商品を提供する」と言った形となります。
目標達成のための目標設定の方法については、詳しくは以前まとめた記事がありますのでそちらをご覧ください。
目標達成のための最適な目標を作るポイントをまとめた記事はこちら
まとめ
ポイントをまとめましたのでおさらいしましょう。
CX(カスタマー・エクスペリエンス)向上とは顧客体験を高めることです。
顧客体験を高めるとは、価格やスペックなどの「物理的価値」ではなく、満足感や効果などの「心理的・感覚的な価値」を高めることで、顧客のロイヤリティを向上させることです。
顧客体験を向上させるという概念は、CXと言う言葉が出てくる以前よりありました。
しかし、近年急激にCXと言う概念が注目され始めた理由は「スペックや外見での差別化が難しくなったとことが様々な業界で同時に起きた」ことによります。
飲食店で見たときに街の中華料理店とチェーン店の中華料理店に、味やサービスの面で大きな差はなくなってきています。
だからこそ、実際に体験した際の心理的・感覚的な価値を大切にしている顧客が増え、継続して利用してもらうためには、商品やサービスだけでなく、一連の体験そのものの向上が必要になっています。
CXとCSは言葉は似ていますが、CXが高くてもCSは低いこともあります。
- CS=部分最適化
- CX=全体最適化
と考えるとイメージしやすいのですが、大切なのは「CXが高い=CSが高い」とは限らないことです。
例えば「めちゃくちゃ美味しいけど脂っぽくて汚い焼肉屋」など、体験は高くても特定ポイントの顧客満足度は高くない例なども多々あります。
そんなCXですが、上げることには4つのメリットがあります。
- リピーター獲得に繋がる
- ファンによる口コミで認知の拡大が期待できる
- 競合他社と差別化でき、よりコアなファンができる
- 顧客が喜ぶ姿を見て、現場で働くスタッフの満足度も上がる
CXを上げたいときは5つのどの価値を上げるか?をまず決めましょう。
5つの価値とは
- SENSE 感覚的経験価値
- FEEL 情緒的経験価値
- THINK 創造的経験価値
- ACT 肉体・ライフスタイル的経験価値
- RELATE 準拠集団・社会的経験価値
となります。
すべてを同時に上げるのは非常に困難ですし、自社の商品やサービスにとって合っていないものもあります。
一つずつ理解した上で優先順位をつけ、一つ一つ着実に向上させていきましょう。
CXを上げるにはひたすら仮説、実行、検証あるのみです。
- 現状・課題を把握する
- カスタマージャーニーマップを作成する
- 仮説・検証を繰り返す
行うことは一般的にPDCAと呼ばれるステップをくり返すのみですので、事前に顧客にどのような体験をしてもらうのか?の設計がとても大切です。
また、CXを向上させるためにまずはCSを上げよう!などと用語のみを掲げてもCXは改善しません。
必ず数字を使った具体的な目標を立てて、CX向上には取り組む必要があります。
目標達成のための目標設定の方法については、詳しくは以前まとめた記事がありますのでそちらをご覧ください。
目標達成のための最適な目標を作るポイントをまとめた記事はこちら
CXは簡単には上がらず、効果が出てくるのにも時間が掛かります。
それでも取り組みを行うメリットは大きく、デメリットはほぼありません。
今すぐにでもCXを向上させ、リピーターやファンの獲得に繋げる取り組みを進めましょう。